司法書士石田光曠のひとり言
■「相続対策」と「相続税対策」の違い
2015年7月8日
最近、新聞を開くとやたら「相続対策」の文字が目立ちます。広告欄も、「相続対策」をテーマにしたイベントの告知が連日のように載っています。そう言えば先日の新聞にも、路線価が下げ止まって相続税の対象者が拡大するかも、というような記事もありましたから、皆さん余計に気になると思います。
でも皆さん、「相続対策」と「相続税対策」を区別してくださいね。両者は別個の対策であり、相続対策の前に相続税対策を先行させたら、とんでもないことになる場合も少なくありませんからね。
「相続税対策」と言えば、今から20年~30年ほど前の高度経済成長期後期からバブル経済期にかけて、相続税を払わなければいけない相続人が急増して大変な時代がありました。今、私の事務所に相談に来られる遺産に関する問題の多くは、このころ被相続人(亡くなられた親御さんなど)が、今巷で開催している目先優先の相続税対策を安易にとられたことの後始末です。当面の相続税をできる限り節税することが、残された相続人(子供たち)にとって最も喜ばれることと信じてやられたのでしょうが、結果、その次の世代の相続の時に大きな問題としてのしかかることを想像できなかったのでしょうか。
「相続税対策」で一番危険なのが、不動産など分けられない資産を安易に共有にさせたり、賃貸や負債を作って資産の評価価値をわざと落とすような工作をしたり・・・・必要のない相続人に大切な資産を相続させてしまったり・・・・
少なくとも「相続対策」は、「相続対策」、つまり各財産のふさわしい承継者が決定した後に取っていただきたいということを申し上げたいですね。
ちなみに相続税は、我が国の税制の中で一番安い税率を採用している税金です。多少の相続税を払ってでも、大切な財産をきれいな形のまま必要な相続人に渡してあげることが一番喜ばれることで、そのためには、何が何でもざいさんを減らさずに残すという発想を捨て、財産に優先順位をつけ、優先順位の低い財産を処分してでも優先順位の高い財産をきれいな形で引き継ぐ方が、どれだけ価値のある相続対策になるかということを知っていただきたいですね。